お知らせ


2015/06/27更新

6月25日に第447回福岡地区小児科医会学術講演会が開催されました

pin一般演題:「血液悪性腫瘍におけるワクチン・ガンマグロブリン療法の位置づけ」
九州大学病院小児科 中島 健太郎先生


pin特別講演:「ライフステージに応じた発達障害児と家族の支援」
久留米大学小児科教授 山下 裕史朗先生


pin発達障害は、2012年の文部科学省の調査では通常学級に在籍する生徒の約6.5%(約70万人)にいると考えられるcommon diseaseで、多くは成人期まで持ち越します。最近では、成人になって初めて社会への不適合から精神科に受診する人も増えており問題になっています。大切なことは乳幼児期に早めに気づいてあげ適切に対処することです。
発達障害の診断・治療エッセンスを山下先生から講演していただきました。


pin発達障害の診断は2013年に改訂されたDSM-5が基本になります。用語上、以下のように若干の改訂があります。
知的能力障害 Intellectual Disability(ID)、自閉スペクトラム症/自閉スペクトラム障害 Autism Spectrum Disorder(ASD)、注意欠如・多動症/注意欠如・多動性障害 Attention-Deficit/Hyperactivity Disorder(ADHD)、局性学習症/限局性学習障害 Specific Learning Disorder(SLD)、発達性協調運動症/発達性協調運動障害 DCD、チック症/チック障害群 Tic Disorder。


pin発達障害は、生来の発達特性に環境不適合があわさって表面化します。治療は行動修正療法 and/or 薬物療法(ADHDに対するメチルフェニデートなど)が選択されます。
治療ゴールは、自尊感情を高め、自分の得意・不得意を認識して自分で工夫出来、生活上のトラブルをなるべく少なくすることです。そのためには発達障害の特性に早めに気付き対応してあげる必要があり、園医・校医としての小児科医の役割が重要です。発達障害の特性を持つ児を診断し(問題のある子を抽出してもらって診察するのが現実的)、親や学校関係者への対応指導や、専門家へ紹介するという中心的役割が小児科医には求められます。


pin初期段階として、養育者との間に安定したアタッチメントが形成されること(無条件に愛してもらえる安全基地の確保)が重要ですが、問題が出る場合があります。子どものかんしゃくや身体障害、養育者のメンタルヘルス障害、経済的問題、DV問題などがアタッチメント形成の障害になり、地域の保健師、児相、医療機関との連携が必須となります。
一方で、レジリエンスが良い母親もいて、(1)発達障害の特性理解が良好、(2)肯定的受容、(3)社会的支援を受けられている、などがレジリエンス向上の重要な要因でした。


pin治療としての、前向き子育て(トリプルP)が世界中で採用されつつありますが、以下の6つの特徴を持ちます。(1)子育て・家族支援で順応性のあるプログラム、(2)予防/早期介入、(3)十分で過不足のないプログラム、(4)evidence-based、(5)5段階の介入レベル、(6)視点は多様な専門家による。
身につける具体的な基本原理は、(1)安全に遊べる環境作り、(2)積極的に学べる環境作り、(3)一貫した分かりやすいしつけ、(4)現実的な期待感をもつ、(5)親としての自分を大切にする、さらに障害児の親には、(6)子どもの障害に適応する、(7)地域社会の一員になる、というプログラムも含まれます。久留米市では平成26年10月からトリプルPプログラムをスタートしています。
高校・大学教育でも発達障害児に対する対応が始まっています。授業におけるIT機器や読み上げソフトなどの経済支援、センター試験での別室などの特別措置、学生生活でのカウンセラーの配置など色々と行われています。


pin今後の小児科医は発達障害の基礎知識は必須といえます。また園医・校医として就学前に、(1)児童の集団行動に問題ないかの把握、(2)知的発達の疑いがあれば検査の勧め、(3)「就学先決定までの手続きの流れ」、「地域の支援資源の紹介」、(4)就学に向けての保護者の不安や希望を聞く、など初期段階で重要な役割をになうことになります。
子どもの特性の把握に役立つ「サポートブック」が久留米市のホームページ(ホームページ→「家庭相談・発達支援」→「発達支援・幼児教育」)→ライフサポートブック「もやい」)からダウンロード出来ます。