お知らせ


2014/12/03更新

11月26日に第441回福岡地区小児科医会学術講演会が開催されました

pin一般演題:「主治医による時間外電話対応について(発熱時対応を含む)」
 進藤 静生先生(しんどう小児科医院院長)
 下村 国寿先生(下村小児科医院院長)
 松崎 彰信先生(まつざき小児科医院院長)


pin特別講演:「小児耳科領域の診療最前線」
 飯野 ゆき子先生(自治医科大学付属さいたま医療センター耳鼻咽喉科教授)


pin耳鼻科疾患で小児科に関連が深い、急性中耳炎、滲出性中耳炎について、さいたま医療センター耳鼻咽喉科教授 飯野 ゆき子先生に講演して頂きました。


pin急性中耳炎に関しては、小児急性中耳炎ガイドライン2013年版を解説していただきました。中耳炎貯留液からの培養では細菌性が70%と多く、うちウイルスの重複感染を15%に認めました。またウイルスが重複感染すると、中耳腔内細菌のクリアランスが遅滞する、抗菌薬の中耳腔移行が減少する、炎症性mediatorの産生が亢進する、などの悪影響が見られました。

 細菌性の起因菌としては、肺炎球菌とインフルエンザ菌が多いのですが重複感染もみられました。重複感染は、やや月齢の高い両側性中耳炎児で多く、抗菌薬治療に抵抗性で反復性、遷延性中耳炎の原因となります。


pin反復性中耳炎の定義は、過去6カ月以内に3回以上、12カ月以内に4回以上急性中耳炎を繰り返す場合となります。2歳未満、保育園児、受動喫煙、薬剤耐性菌感染、頭蓋顔面奇形を伴う口蓋裂、Down児などがリスクとなります。また、遺伝子異常(補体系関連遺伝子など)の関与も知られてきました。

 対応としては、肺炎球菌ワクチン接種、適切な抗菌薬(肺炎球菌でのオラペネム、インフルエンザ菌でのオゼックス)、十全大補湯を検討しますが、改善がみられない場合は鼓膜換気チューブ留置の適応となります。自然経過で2歳になると反復性中耳炎は激減します。


pin急性中耳炎で耳鼻科へ紹介するケースとしては、重症度判定(図)で重症と判定される場合(鼓膜切開が必要)、耳後部の腫脹、圧痛が見られる場合(乳様突起炎)が特に重要です。


pin小児滲出性中耳炎については、ガイドラインを作成中で2015年1月に刊行予定です。

 定義は、鼓膜に穿孔がなく、中耳腔に貯留液をもたらし難聴の原因となるが、急性炎症症状すなわち耳痛や発熱のない中耳炎、となります。感染が引き金となり、組織障害・過分泌に耳管機能障害が加わって滲出性中耳炎は引き起こされます。

 発症3カ月過ぎると治癒率が低下するため、治療介入が必要となります。副鼻腔炎を合併する滲出性中耳炎はマクロライド療法が選択枝のひとつになります(推奨度B)が、逆に周辺器官に細菌感染を伴わない場合は抗菌薬の使用は勧められません(推奨度D)。また繊毛機能の改善を促すカルボシステインも選択枝のひとつになります(推奨度A)。鼓膜所見で含気が全くない場合や難聴の程度が強い重症例は鼓膜換気チューブの適応となりますが、耳漏、鼓膜の石灰化や菲薄化、永久穿孔などの後遺症を残す場合もあります。


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