川崎病



概要

  • 1967年に川崎富作博士によって、世界で初めて発見された病気です。
  • 原因は、現在でも不明です。
  • 高い熱と発疹が続き、急性期の症状が治った後に、心臓を栄養とする冠動脈に動脈瘤の後遺症が残ることがあります。
  • 稀に心筋梗塞や心筋炎で、死亡することもあります。


症状

次のような症状が4つ以上あると、川崎病の疑いがあります。


  • (1)40度近い高熱が、5日以上続く
  • (2)手足の先がはれる
  • (3)発疹がある
  • (4)目が真っ赤になる(充血する)
  • (5)唇が口紅を塗ったように真っ赤になり、舌もいちご状になる
  • (6)リンパ節がはれる


  • これらの症状が1~2週間で消えた後、指先から皮膚が、ポロポロとむけてきます。これが川崎病の最も特徴的な症状です。


診断

  • 上の症状
  • 血液検査。炎症反応(CRP)の高値など


治療

  • 冠動脈瘤を100%予防する治療はなく、研究が続けられています。
  • 川崎病が疑われたら、入院します。血栓ができるのを予防するため、アスピリンを内服します。
  • ガンマグロブリンという血液製剤を大量に点滴注射すると、冠動脈合併症(冠動脈拡張や冠動脈瘤)の発生は20%から5%に減ります。
  • 他にステロイドパルス療法、ウリナスタチンという薬が使用される事があります。
  • 退院時に後遺症が認められなくても、定期的に検査が必要です。
  • 急性期の1ヶ月間に心臓に異常がなければ、ほとんどの場合は後遺症の心配はありません。
  • 明らかに冠動脈に動脈瘤が認められる場合は、薬を飲むことになります。


詳細な解説



川崎病

  • 川崎病は、主に4歳以下に好発する急性熱性疾患で、右に示す診断基準により診断します。年間では5000~6000人の子供が罹患します。この病気に特徴的なのは、全身の中小動脈に血管炎がおこり、血管拡張や動脈瘤を併発する場合がある事です。
  • 血管炎で特に問題になるのは、心臓を栄養する冠動脈に冠動脈瘤が起こる場合です。その結果、血管の狭窄や血栓が生じ、心筋梗塞をひきおこす事があります。
  • 原因はまだ解明されていませんが、流行がある、特定の病原菌がみつかっていない事などから、何らかの感染症をきっかけとしておこる全身の炎症反応(サイトカイン関連疾患)説が有力です。
  • 大部分のケースでは、2~3日の発熱の後に、発疹と白目の部分の充血が現れるという経過をとります。学童で発症する場合は、発熱と頸部リンパ節の腫脹が目立ち、初期は化膿性リンパ節炎の診断名がつけられる事があります。
  • また非定型的(主要症状が4つ以上揃わない)な経過をとる場合もよくあり、疑われる時は心エコーを行い冠動脈に異常がないか調べることが勧められます。時に心筋炎や、非常に稀には、意識障害など脳炎様の激烈な症状で発症することもあります。
  • 冠動脈瘤を100%予防する治療は、現在ありません。診断がつくと入院治療となりますが、標準的な治療としては血栓の進行をおさえるためにアスピリンを内服します。またガンマグロブリンという血液製剤を大量に点滴静注します。ガンマグロブリンは血液製剤ですので、使用前に説明と文書による了解(インフォームドコンセント)が必要となります。
  • ガンマグロブリンの使用により、冠動脈合併症(軽い冠動脈拡張~巨大冠動脈瘤)の発生は、20%から5%に減り、また有熱期間も短くなります。
  • 治療に反応せず、発熱が続く不応例では、ガンマグロブリンを追加投与する、ステロイドパルス療法を行う、ウリナスタチンを使用するなどが行われていますが、スタンダードになっているものはありません。


川崎病の診断基準

A主要症状
(1)5日以上続く発熱(ただし、治療により5日未満で解熱した場合も含む)
(2)両側眼球結膜の充血
(3)口唇、口腔所見: 口唇の紅潮、イチゴ舌、口腔咽頭粘膜のび慢性発赤
(4)不定形発疹
(5)四肢末端の変化:(急性期)手足の硬性浮腫、掌蹠ないし指趾先端の紅斑 (回復期)指先からの膜様落屑
(6)急性期における非化膿性リンパ節腫脹


6つの主要症状のうち5つ以上を含むものを本症とする。
ただし、上記6主要症状のうち、4つの症状しか認められなくても、経過中に断層心臓エコー法もしくは、心血管造影法で冠動脈瘤(いわゆる拡大も含む)が確認され、他の疾患が除外されれば本症とする。


B参考条項
以下の症候および所見は、本性の臨床上、留意すべきものである。

1.心血管 聴診所見(心雑音、奔馬調律、微弱心音)、
心電図の変化(PR・QT延長、異常Q波、低電位差、 ST-Tの変化、 不整脈)、胸部X線所見(心陰影拡大)、断層心エコー図所見(心膜液貯留 冠動脈瘤)、狭心症状、末梢動脈瘤(腋窩など)
2.消化管 下痢、嘔吐、腹痛、胆嚢腫大、麻痺性イレウス、軽度の黄疸、血清トランスアミナーゼ値上昇
3.血液 核左方移動を伴う白血球増多、血小板増多、 赤沈値の促進、CRP陽性、低アルブミン血症、α2グロブリンの増加、軽度の貧血
4.尿 蛋白尿、沈渣の白血球増多
5.皮膚 BCGの接種部位の発赤・痂皮形成、小膿泡、爪の横溝
6.呼吸器 咳嗽、鼻水、肺野の異常陰影
7.関節 疼痛、腫脹
8.神経 髄液の単核球増多、けいれん、意識障害、顔面神経麻痺、四肢麻痺

備考
(1)主要症状Aの5は回復期所見が重要視される。
(2)急性期における非化膿性頸部リンパ節腫脹は他の主要症状に比べて発現頻度が低い(約65%)。
(3)本症の性比は1.3-1.5:1で男児に多く、年齢分布は4歳以下が80から85%を占め、致命率は0.1%前後である。
(4)再発例は2-3%に、同胞例は1-2%にみられる。
(5)主要症状を満たさなくても、他の疾患が否定され、本症が疑われる容疑例が約10%存在する。この中には冠動脈瘤(いわゆる拡大も含む)が確認される例がある。