溶連菌感染症



概要

  • 溶血性連鎖球菌(溶連菌)による感染症で、風邪と同じような症状を起こします。
  • 体に発疹が出たり、急性腎炎という合併症を起こすことがあります。


原因

  • 溶血性連鎖球菌(溶連菌)が、患者の咳やくしゃみで飛び散り、それを吸い込んで感染します(飛沫感染)。
  • 感染してから、発症するまでの潜伏期間は2~7日です。


症状

  • A群溶連菌の感染症では、①健康保菌状態、②急性化膿性の病気(咽頭炎やとびひ)、③免疫反応による合併症(急性糸球体腎炎・リウマチ熱)、の3つの場合が知られていました。1990年代になってからは、④ショック症状、腎不全などで死亡する劇症型溶連菌感染症も注目されるようになりましたが、極めて稀です。
  • 急性咽頭炎:
    風邪の症状と同じで、のどが痛くなり熱が出て、のどや口の中が真っ赤になります。また、舌にいちごのようなブツブツ(いちご舌)ができることもあります。食べ物・飲み物を飲み込んでも痛みます。腹痛を起こすこともあります。
  • 猩紅熱:
    溶連菌は発赤毒素をもっていて、感染すると全身に粟粒大の赤い発疹ができ、全体が赤くみえるので、その場合は「猩紅熱」といいます。
    1~2日すると、赤く小さなかゆみのある発疹が、首・胸・手首・足首に出て、しだいに全身に広がります。3~4日すると、いちご舌ができ、唇のはし(口角)が荒れてきます。治療すると2~3日で、熱が下がり、発疹も薄くなってきます。2週間くらいして、手足の皮膚がむけることもありますが、跡は残りません。他の症状は、急性咽頭炎と同じです。
  • 熱や発疹の様子で、判断できる病気ですが、のどの粘液の検査や血液検査で確実に診断できます。


治療

  • 溶連菌に有効なペニシリン系(サワシリンなど)その他の抗生物質を服用します。
  • 感染性があるため、最初の2-3日は学校は休む必要があります。
  • 2-3日程度で、喉の痛みや発熱、発疹などの症状は軽くなります。
  • 症状がなくなったと思って、親の判断で勝手に抗生物質の服用を止めないようにしましょう。みかけの症状は消えても、溶連菌は喉に残っていて、再発したり合併症を起こしたりします。
  • ふつう5~10日間くらい抗生物質の服用を続けますが、抗生物質の服用は、お医者さんの指示を受けましょう。
  • 抗生剤の内服を続けるうちに、薬疹が出来ることが稀にあります。内服中に今までと違う発疹が出てくる場合は、すぐにお医者さんにかかるようにして下さい。


合併症

  • 回復後、2~4週間してから急性腎炎・リウマチ熱・アレルギー性紫斑病などを起こすことがあります。
  • 顔がむくんだり、尿がでにくい、動悸、息切れ、関節痛などがあったら、すぐ受診して下さい。
  • 合併症の発生は、溶連菌感染症にかかった人の1%以下にみられます。
  • 長期治療が必要だったり、後遺症を残すこともありますので、初期治療をきちんとすることが重要です。
  • 抗生剤をきちんと飲むと、リウマチ熱の合併症を起こす確率は1/100以下に下がります。


詳細な解説



溶連菌感染症

  • 溶連菌感染症は、レンサ球菌属に属する細菌で、さらに血清群別に分類されるA型溶血性連鎖球菌中の、化膿連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)感染症を、一般的にはさします。
  • この菌は溶血毒や発熱毒素(発赤毒素)を産生し、発疹の症状を起こしたりします。
  • また、菌体外蛋白が原因となる免疫学的機序により、急性糸球体腎炎やリウマチ熱の合併症を引き起こす事もあります。これは、細菌を排除しようとする免疫力が、誤って菌体外蛋白と似た体の組織を攻撃したり、その結果出来る物質が腎臓に付着したりするためと考えられています。
  • 病気の形としては、咽頭炎、扁桃炎が最も多く、舌のブツブツ(味蕾)が腫れて全体的に赤くなり、イチゴのように見える(苺舌)のが特徴的です。さらに、体に赤く、かゆみを伴う、2~3mmの発疹が多数出てくる場合は、猩紅熱とも呼ばれます。これが治癒する頃に、手足の先の皮がむけてくるのも特徴的な所見です。潜伏期間は1~7日。
  • 症状と、のどの粘液からの培養(3~4日かかります)や、迅速診断キット(10分程度)、血液のASO値、ASK値の上昇から診断をつけます。
  • 診断がつくと、抗生物質の内服治療を行いますが、合併症の発生を抑えるためにもセフェム系抗生剤(メイアクトなど)では5~7日間、ペニシリン系抗生剤(サワシリンなど)では10日間程度きちんと治療を行うのが重要です。確実に治療するとリウマチ熱の発症は1/100(0.02%)程度に抑えられます。
  • 兄弟にも感染する事が多く、検査して溶連菌が陽性であれば同様に治療します。
  • 合併症は、感染後ある程度時間がたってから(10日~数週間)、発症します。代表的なものを表にします。


溶連菌の合併症

pin急性糸球体腎炎


  • 症状:血尿、オシッコが出ない(乏尿)、体のむくみ(浮腫)、高血圧、全身の倦怠感などが最初の症状。
  • 診断:検尿(血尿や蛋白尿の所見)、低補体血症、溶連菌感染症の既往。
  • 治療:安静、食事療法、高血圧の治療など。

pinリウマチ熱


  • 症状:発熱を伴い、病型により、心炎、移動性の多関節炎などの症状。また、感染後何カ月かたってから舞踏病(手足が自分の意志とかかわりなくクネクネと不随意に動いてしまう)。
  • 診断:CRPなど急性期反応物質の高値、溶連菌感染症の既往。
  • 治療:アスピリン、ステロイドなど。また再発予防のための抗生剤の長期投与。