お知らせ


2015/07/25更新

7月22日に第448回福岡地区小児科医会学術講演会が開催されました

pin特別講演:「小児の眼科疾患~弱視・斜視の診療~」 皆良田眼科医院院長 皆良田 研介先生


pin特別講演:「耐性菌を考慮した小児呼吸器感染症への対応Up Date」 慶応義塾大学医学部感染症学教室教授 岩田 敏先生


pin市中感染症の耐性菌の動向、臨床現場での耐性菌対策、ガイドラインの治療方針、小児細菌性肺炎のオラペネム® 高用量3日間投与の成績、について岩田敏先生からご講演いただきました。


pin(1)耐性菌の動向
【肺炎球菌】:β-ラクタム系耐性菌(ペニシリン結合蛋白の変異による薬剤親和性低下)などが、1990年代以降増加し、中耳炎や髄膜炎の難治化の要因になっています。しかし、肺炎球菌結合型ワクチン(PCV)の定期接種化に伴い、髄膜炎は半減し、耐性菌も同時に半減しています。それに引きずられる形で、成人でも耐性菌が減少しています。MIC90(90%の菌の発育を阻止できる最小発育阻止濃度)が1μg/mL以下の比較的感受性が保たれている抗生剤は、経口薬ではオラペネム® 、ファロム®、メイアクト®があります。
【インフルエンザ菌】: β-ラクタマーゼ産生菌(BLPAR)や、ペニシリン結合蛋白の変異菌(BLNAR)が、1995年代以降増加し、中耳炎や髄膜炎の難治化の要因になっています。MIC90が1μg/mL以下の比較的感受性が保たれている抗生剤は、経口薬ではオラペネム® 、トミロン®、メイアクト®があります。
両菌による侵襲性感染症はワクチン導入後減少しており、相対的にB群溶血性連鎖球菌(GBS)による髄膜炎の占める割合が増加しています。
小児侵襲性肺炎球菌感染症(IPD)での血清型は、PCV7に含まれる血清型の減少、含まれない19Aの上昇が見られていましたが、19Aを含むPCV13の導入により、2014年後半には19Aも減少してきました。成人でも同様の傾向です。
【マイコプラズマ】:マクロライド系薬の作用点である23SリボソームRNAドメインⅤにおける遺伝子変異による耐性菌の増加が見られています。2000年頃(?)から増加し、現在はマクロライド耐性菌が50~60%を占めています。
【カルバペネム耐性腸内細菌科細菌(CRE)】CREは院内感染で問題となり、カルバペネマーゼ、β-ラクタマーゼ産生により多剤耐性化しやすく、敗血症を起こした場合の死亡率は50%となります。診断上カルバペネム系薬の判定が必ずしもRにならず、確認試験が必要になります。現時点では、欧米と比較して日本は少ない状況です。


pin(2) 臨床現場での耐性菌対策
耐性菌は抗生剤による選択圧がない環境では増殖しないため、抗生剤の適正使用と施設内での水平伝播抑止が対策の要となり、またワクチンによる感染予防も有効です。
水平伝播抑止には手洗いが有効で、患者さんに触れる前の手洗いや、また患者さん自身の手洗いも重要になります。
抗菌薬については、必要な症例に、適切な抗菌薬を、適切な量で、適切な期間投与する心がけが必要です。血中濃度シュミレーション上は、β-ラクタム系抗生剤はTime above MIC(TAM、図1)が有効性の指標になり、増殖抑制を期待するためにはTAM40%以上をキープする必要があります。この考えでいくと、メイアクト®3mg/kg分3投与ではBLNARのMIC90である0.5μg/mLではTAM40%以上を保てますが、PRSPのMIC90である1μg/mLにおいては40%を保てません。これが6mg/kg分3投与になると、1μg/mLにおいても40%を保てます。つまりPRSPを抑制するためには、6mg/kg分3投与が適切な量になります。
また、耐性菌をできるだけ出現させない投与法の工夫も必要でしょう。抗生剤血中濃度のシュミレーションでは、効果はあるが耐性菌の誘導が起こるMSW(Mutant Selection Window)の概念があります(図2)。高用量短期間投与ではMSWを短くする事が出来ます(図3の赤い部分)。


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pin(3)ガイドラインの治療方針
小児呼吸器感染症診療ガイドラインでは、原因微生物不明時の初期抗菌薬療法として図のように推奨しています。


pin(4)小児細菌性肺炎のオラペネム® 高用量3日間投与
オラペネム®6mg/kg分2、3日間投与のプロトコールを施行しました。症例は10カ月から188カ月(中央値29カ月)の軽症~中等症の細菌性肺炎児で、エントリー50例、有効性評価適合症例37例で、33例は7~15日後の治癒判定時まで追跡しました。7例以外の起因菌は、肺炎球菌and/orインフルエンザ菌and/orモラクセラ・カタラーリスでした。結果、33/33例(100%)が治癒判定で、副反応は軟便が10%程度に認められるのみでした。高容量3日間投与は有効でした。


pin(5)Take home message
小児呼吸器感染症診療においては、以下の点が重要です。
・原因微生物の推定(可能な限り明らかにする)
・年齢を考慮した抗菌薬の選択
・耐性菌の存在、PK/PD(Pharmacokinetics、Pharmacodynamics) を念頭に置き、ガイドラインに従って抗菌薬を適正使用する
・VPDに対するワクチン使用
また、新規抗菌薬の開発も課題です。