お知らせ


2014/07/26更新

7月23日に第438回福岡地区小児科医会学術講演会が開催されました

pin一般演題:「マイコプラズマ感染症に併発した川崎病の症例」
 豊村 大亮先生(福岡市立こども病院・感染症センター総合診療科)


pin特別講演:「肺炎診断の最新知見とガイドラインに基づく治療戦略」~(PM2.5についてもふれます)
 迎 寛先生(産業医科大学医学部呼吸器内科学教授)


pin内科領域における肺炎の診断と治療戦略、ならびにPM2.5に関する話題について、産業医科大学内科教授の迎先生からお話をうかがいました。


pin高齢化社会を反映し肺炎は脳血管疾患を抜いて死亡原因の3位となり、日本呼吸器学会では肺炎治療のガイドラインを整備し取り組んでいます。

 成人市中肺炎診療ガイドラインでは、A-DROPシステムで重症度を判断すること、原因菌不明時外来治療薬の選択を、細菌肺炎疑い、非定型肺炎疑いにわけて選択することなどを推奨しています。A-DROPシステムは、(A)ge:男性70歳以上、女性75歳以上、(D)ehydration:BUN21mg/dl以上、®espiration:SpO2 90%以下、(O)rientation:意識障害あり、(P)ressure:収縮期血圧90mg/Hg以下の5項目中、3項目以上は重症で入院、4-5項目は超重症でICU入院とし、死亡率ともよく相関し有用性が示されています。

 外来治療の概要は次の通りです。

【細菌性肺炎疑い】

(1)基礎疾患、危険因子なし:→βラクタマーゼ阻害薬配合ペニシリン系高用量
(2)65歳以上あるいは軽症基礎疾患(心腎肝疾患、糖尿病):→βラクタマーゼ阻害薬配合ペニシリン系±マクロライド系あるいはテトラサイクリン系
(3)慢性の呼吸器疾患、最近抗菌薬の投与をうけた、あるいはペニシリンアレルギー:→レスピラトリーキノロン系
(4)外来で注射:セフトリアキソン

【非定型肺炎疑い】

(1)基礎疾患がない、あるいは軽微、もしくは若年成人:→マクロライド系、テトラサイクリン系、3日間で改善しなければ、βラクタマーゼ阻害薬配合ペニシリン系に変更
(2)65歳以上あるいは慢性の呼吸器疾患、心疾患がある場合:→(1)のほかレスピラトリーキノロン系、ケトライド。


pin2011~2012年にはマイコプラズマが流行しました。ガイドラインの非定型肺炎鑑別の指標は、(1)年齢60歳未満、(2)基礎疾患がない、あるいは軽微、(3)頑固な咳がある、(4)胸部聴診上所見が乏しい、(5)喀痰がない、あるいは迅速診断法で原因菌らしきものが証明されない、(6)末梢血白血球数が10,000/μl未満、の6項目中、(1)~(5)の3項目以上陽性、あるいは(1)~(6)の4項目以上陽性で判断し、マイコプラズマ肺炎の鑑別としては感度、特異度とも良好です。

 また、マイコプラズマ肺炎のCT所見では、細気管支領域の小葉中心性粒状影、気管支壁の肥厚、すりガラス影を参考にします。急性期診断ではLAMP法が最もすぐれていますが、リボソームのL7/L12蛋白をターゲットとした迅速診断(リボテスト マイコプラズマ)もすぐれた方法と考えられます(ただし、正しく口蓋垂裏側の鼻咽頭拭い液を検体にした場合)。


pin培養や血清診断などの従来の原因菌検索には明らかな限界があり、新しい試みが求められています。

 産業医大では、16S rRNAをターゲットとした網羅的細菌叢解析を行っています。16S rRNAは、リボゾームの構成成分で細菌種が共通して保有するhousekeeping遺伝子で、その塩基配列により菌種同定が可能です。網羅的細菌叢解析は、検体からDNAを抽出後PCR増幅し、その塩基配列を16S rRNAデータベースと照らし合わせ、検体の菌種と割合を推定する方法です。有用性の具体例としては、網羅的細菌叢解析により診断できた、鼠咬症による感染性心内膜炎の症例が紹介されました。また従来の喀痰や気管支洗浄による培養では原因菌を特定できない場合が多くありますが、網羅的細菌叢解析は有用でした。

 この方法では、市中肺炎の単独感染では、肺炎球菌、インフルエンザ桿菌、マイコプラズマが3大菌種で、混合感染では嫌気性菌、口腔内レンサ球菌が検出されるのが特徴的でした。


pinその他、(1)小児のマクロライド耐性マイコプラズマ感染症の治療は、有熱期間は延びるがマクロライド系が基本、(2)慢性呼吸器疾患(COPD)の急性増悪時のキノロンの有効性、(3)マクロライド系がもつ種々の抗炎症作用と、ICUで治療された市中肺炎でマクロライド系iv併用群で死亡率が低下した興味深いデータ、などが紹介されました。


pinPM2.5の話題も提供されました。 PM2.5は大気中に存在する粒径2.5μm以下の小さな粒子の総称です。米国では、1970代後半からすでにモニタリングが開始されており、1993年には死亡率との関係、また濃度改善による死亡率の減少が報告され、1997年には米国で環境基準が設定されました。日本では2009年に環境基準が設定され、年平均15μg/m3、日平均35μg/m3とされました。近年、中国からの越境汚染で注目されるようになりました。

 粒径の小さいPM2.5は肺まで到達し沈着します。健康に対する影響としては、長期暴露、短期暴露とも死亡、新血管系との因果関係は明確、呼吸器系についてはほぼ明確です。米国ではPM2.5日平均濃度10μg/m3の上昇で、当日から数日以内の死亡率上昇が全死亡0.3~1.2%、心血管系疾患による死亡1.2~2.7%、呼吸器系疾患による死亡0.8~2.7%と報告されています。

 PM2.5が全身に影響をおよぼすメカニズムとしては、捕食した肺胞マクロファージがIL-6やIL-8などの炎症性サイトカインを産生、さらに血流にのり骨髄を刺激し全身の炎症を起こすことなどが想定されます。環境省大気汚染物質広域監視システム「そらまめ君」のホームページで汚染物質測定結果などの有益な情報を得ることが出来ます。