尿路感染症



概要

  • 病原菌が、尿の通り道のどこかに感染した状態をいいます。
  • 尿道・膀胱など、下の方の尿路に起こる下部尿路感染症と、尿管・腎盂・腎臓などの上の方の尿路におこる上部尿路感染症にわけられます。
  • 下部尿路感染症は、幼児以降の女の子に多く、上部尿路感染症は乳幼児では男の子に、年長になると女の子に多いです。


原因と診断

  • 原因となる菌は、便の中にいる大腸菌が80%と大多数を占めます。
  • 尿中の白血球が増えていることや、原因となる菌が多数いることなどで、診断していきます。


症状と治療

  • 下部尿路感染症:
    ・尿道炎と膀胱炎が代表的です。
    ・おしっこをするときに痛みがある、残尿感(おしっこをしてもまだ残っている様な感じがする)、下腹部の違和感、頻回におしっこをする、等の症状があります。
    ・熱はないか、あっても38℃以下のことが多いです。
    ・乳幼児では症状を正しく訴えることができないため、最初は風邪と見分けがつきにくいこともあります。
    ・抗生剤を飲んで治療します。症状が消えても細菌が完全にいなくなるまで、7日間程度はしっかりと薬を飲み続けることが大切です。
  • 上部尿路感染症:
    ・下部尿路感染症が、上部尿路に広がっておこる腎盂腎炎という病気が代表的です。
    ・主な症状は38℃以上の高い熱、寒気、不快感、腰背部痛、側腹部痛、顔色が悪い、食欲がないなどです。
    ・子供で高熱があるのに、咳、鼻水などの風邪症状がない場合は、腎盂腎炎の可能性も考える必要があります。
    ・入院して、注射の抗生剤を使い、最低1週間は治療するのが一般的です。
    ・下記の検査で異常が見つかる場合は、再発を防ぐため、抗生剤を少量(治療量の1/4から1/10)で6カ月~1年間予防内服します。
    ・尿路の異常があり、予防内服しても再発を繰り返す場合などは、手術が必要になることもあります。

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精密検査

  • 尿路に異常があることが原因で尿路感染症をおこすこともあり、次のような尿路系の精密検査が必要です。
  • 超音波検査-水腎症(腎盂が拡大している状態)や、腎臓の形の異常をみます。
  • VCG(排尿時膀胱尿道造影)-おしっこをする時に、膀胱の尿が腎臓に逆流していないか(膀胱尿管逆流)調べる検査です。
  • IP(腎静脈腎盂造影)-水腎症や、尿管の異常を調べる検査です。


日常のケア

  • 便の中の菌が原因になることが多いので、女の子の場合は外陰部の清潔や、排便後オシリを拭く時に、気をつけるようにしましょう。
  • 年長児では、便秘や排尿回数が少ない場合は膀胱が不安定になり、尿路感染症につながるので、気をつけるようにしましょう。


詳細な解説



尿路感染症

  • 尿路感染症は子供の熱の原因として、比較的多いもののひとつです。
  • 年長児の下部尿路感染症は、排尿時痛などの症状から診断は比較的容易です。しかし、乳幼児の尿路感染症は発熱症状だけの場合が多く、風邪症状がなくて発熱がある場合に疑う必要があります。
  • おしっこの中の白血球が増えていることが、診断の参考になりますが、乳児ではおしっこをうまく採ることはなかなか難しいことです。また採り方によっては、オシリの周りのカスがおしっこに混ざってしまい、そのせいで白血球が増えて、診断を誤ってしまうこともあります。導尿法(くだをオチンチンに入れて、膀胱から尿を直接採る方法)は確実ですが、消毒をしっかりしないと、逆に尿路感染症をひきおこしてしまう場合があります。
  • 原因菌の診断は、採尿バッグ法で10万コロニー/1ml尿、導尿法で1万コロニー/1ml尿以上細菌が培養されることが、目安になります。原因菌としては、便の中にいる大腸菌が60-80%と大部分を占めます。
  • 乳幼児の尿路感染症の大きな問題は、尿路系の異常を元々もっていることが多い点です。
  • 例えば、膀胱尿管逆流(vesicoureteral reflex、VUR:通常膀胱内の尿は、弁などの仕組みで腎臓方向に逆流しないようになっています。この点に異常があり、腎臓方向に尿が逆流する現象です。)、水腎症(腎盂の部分が色々な原因で拡大している状態。)、尿道狭窄・尿道弁・不安定膀胱(いずれも尿が腎方向に逆流する原因になります。)、などです。
  • これらの異常を見つけるために、腎の超音波検査(水腎症などの腎奇形の発見)、排尿時膀胱尿道造影(voiding cystourethrography、VCG:膀胱内に造影剤を注入し、それがおっしことして排泄される時に腎方向に逆流していないかみる検査。通常、尿路感染症を発症してから1カ月程度たってからやります。)、腎静脈腎盂造影(intravenous pyelography、IP:水腎症や、尿管の異常を調べる検査。)、などの検査が必要になります。また腎臓のダメージがあると考えられる場合は、腎シンチグラフィーという検査をして、腎機能を評価します。
  • 膀胱尿管逆流(VUR)-尿路感染症の子供の、13-51%に合併すると報告されています。程度が軽い場合は、次にあげる予防内服などの治療を行ううちに自然になおりますが、程度が極めて強い場合は手術が必要になります。
  • 治療には抗生剤を使います。下部尿路感染症の場合は、内服で7日間程度、上部尿路感染症の場合は、入院して注射薬で最低7日間程度治療します。
  • 検査で腎臓やVURなどの異常がみつかった場合は、再発を防ぐために、さらに抗生剤の予防内服を行います。セファクロル(ケフラール)やST合剤(バクタ)などを、治療量の1/4~1/10で6カ月~1年間内服します。
  • 尿路感染症は適切な診断、治療が行われないと、腎組織が瘢痕化し、将来の腎不全に結びつくこともあります。尿路感染症にかかった場合は、治療方針や検査をお医者さんとよく相談するようにして下さい。