花粉症



概要

  • 花粉症は、日本では1960年代に初めて報告されました。
  • その後、急激に患者数が増えており、現在では日本人の20%程度がもっている病気と見られています。
  • また、低年齢化も進んでおり、小学生でも増えています。
  • アレルギー疾患のひとつです。鼻に進入してきた本来無害な花粉を異物と誤認識し、免疫システムが過剰反応することでおこります。
  • 花粉飛散の時期にあわせて、鼻水・くしゃみ、鼻づまり、目の痒みなどの症状が起こります。


症状

  • スギ花粉が代表原因で、2月初旬くらいから飛散し始めます。その時期から、次のような症状が出始めると花粉症の疑いがあります。
  • 鼻水・発作的なくしゃみ。鼻のかゆみ。
  • 鼻づまり症状がひどく、寝づらくなる。
  • 鼻水と鼻づまり症状が同時におこることもあります。
  • 目の痒み、目の充血、涙目。目の下が紫色、浮腫状になるアレルギー性くま。
  • 皮膚、耳、のどの痒み。
  • 学童以下では顔のしかめぐせが目立つこともあります。


診断

  • 上の症状
  • 血液検査。スギ、ヒノキなどの特異的IgE抗体が陽性かどうかを参考にします。
  • 他に、(1)鼻鏡検査で鼻の粘膜が赤くなり腫れていないか、あるいは蒼白か、(2)鼻水の中の好酸球という物質が増えていないか、(3)誘発テスト(花粉抗原ディスクを鼻粘膜に置いて、症状が誘発されるかどうか)、などを参考にします。


治療

  • 花粉アレルゲンの回避を行います。外出時のマスク、メガネ(ゴーグル)、帽子、帰宅後の洗顔(眼)、うがい、鼻かみ、衣類を着替えるなどを行います。
  • 薬物療法は、鼻水などの症状をやわらげる対症療法が中心になります。スギ花粉飛散の時期にあわせて薬を飲みます。
  • 鼻水症状には、抗ヒスタミン薬(アレグラ、アレジオン、アレロック、エバステル、クラリチンなど)の内服が有効です。症状がひどい場合はステロイド薬の点鼻(フルナーゼ点鼻など)を行います。
  • 鼻づまり症状がひどい場合は、抗ロイコトリエン薬(オノン、キプレス、シングレアなど)が有効です。
  • 目の痒みには抗アレルギー点眼薬(インタール、リザベン、ザジテンなど)が有効です。症状がひどい場合はステロイド点眼薬(フルメトロンなど)を使います。
  • 根治療法としては、特異的減感作療法があります。
  • これは、スギ花粉エキスを低濃度から開始し、徐々に濃度を濃くしながら皮下注射していく方法です。注射のたびに病院に通う必要があり、完全に終了するまで数年かかります。また、全員に有効なわけではありません。
  • 注射ではなく、舌の下にエキスを含ませる舌下液(シダトレン)による減感作療法も2014年から保険適用されました。


詳細な解説



花粉症

  • 日本では、1964年にスギ花粉症が初めて報告されました。その後、戦後植林されたスギ花粉飛散の増加とともに、急速に罹患者が増加しており、今では国民病とまでいわれています。
  • 花粉症は代表的なⅠ型アレルギー疾患です。人にはウイルスなどの異物を排除する免疫機能が備わっています。花粉症の患者さんは、無害な花粉を異物として認識してしまいます。その結果、粘膜に進入した花粉はIgE抗体という免疫物質を介して、免疫細胞(マスト細胞)を刺激します。この細胞から血管拡張、血管透過性亢進をひきおこす、ヒスタミンやロコトリエンなどの物質が放出され、鼻水や目の痒みなどの臨床症状がおこってきます。
  • スギ花粉が代表的な原因アレルゲンですが、多くの場合はヒノキ花粉アレルギーも合併します。一般に飛散時期は、スギ2~4月、ヒノキ4~5月、イネ科(カモガヤ)8~10月、ブタクサ8~10月です。
  • 低年齢化も進んでいます。ある調査では、11~15歳の調査で45%程度がスギ花粉に感作(血液検査でスギIgE抗体陽性)されていました。ただし、この内実際に花粉症の症状があったり、その後花粉症を発症した児童は一部のみでした。IgE抗体のスコアが高いほど、実際に発症しやすくなります。
  • 下のような基準で診断しますが、実際には症状のみで診断され処方されることも多々あります。発症初期や、小児の場合は診断が難しい場合があります。
  • 発症すると毎年花粉症の時期に、下記のような治療薬を内服したりして、症状を軽くします。
  • 根治療法としては、特異的減感作療法がありますが、病院に受診し定期的に注射が必要、終了するまで数年かかる、全員に有効なわけではない、などの問題点があります。これを簡単にした下のような舌下免疫療法も2014年から保険適用されましたが、やはり全員に有効なわけではありません。


診断

pin花粉症の診断


(1)花粉飛散期に、くしゃみ、鼻汁、鼻閉の3主徴がある
(2)鼻汁中好酸球陽性
(3)誘発テスト陽性
(4)血清中特異的IgE抗体陽性、あるいは皮内テスト陽性


(1)があり、(2)~(3)の1項目があれば診断される。(2)~(3)の2項目あれば確実に診断される。


治療

pin舌下免疫療法


  • スギ花粉舌下液(シダトレン)を2分間舌下に保持してから飲む込む(はき出してもよい)という方法で行います。
  • 最初は薄い濃度から始め、毎日増やしていき、3週間で維持量にもっていきます。
  • これを花粉症シーズン前から開始し、最低でも2シーズンは行います。
  • 完全な治癒も2シーズン目には2割弱認められました。

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