お知らせ


2016/01/30更新

1月28日に第452回福岡地区小児科医会学術講演会が開催されました

pin基調講演:「小児科から紹介の多い小児整形外科疾患」
福岡市立こども病院 整形・脊椎外科 中村 幸之先生


pin特別講演: 「定期接種化が期待されるワクチンについて~B型肝炎ワクチンを中心に~」筑波大学医学医療系小児科教授 須磨崎 亮 先生


pin現在、ロタウイルスワクチン、おたふくかぜワクチン、B型肝炎ワクチンが定期接種化に向かっています。B型肝炎ワクチンの厚生省研究班代表をされている須磨崎 亮 先生から3ワクチンの現状について講演していただきました。


pinロタウイルスワクチン:(1)ワクチンの内服により2回の自然感染を模倣することが出来、重度の感染にいたらない効果があります。77カ国ですでに定期接種化されており、うち英国ではロタ胃腸炎の報告数が70%減少しています。任意接種の日本でも、すでにロタウイルス検出数減少が報告されています。(2)接種後、3~5歳時までは重症化予防効果が持続し、また副次的に未接種者の感染も減少します。(3)腸重積症のサーベイランスデータの整理、入院数減少と副作用のリスクベネフィット分析、医療経済効果の評価、を行っており平成28年の定期接種化を目指しています。


pinおたふくかぜワクチン:(1)自然罹患すると合併症が多く、特異的治療がなく、不顕性感染があり発症者の隔離で流行が防げず、ワクチンの定期接種化による予防が必要な疾患です。(2)定期接種化に向けては、1回接種か2回接種か?、接種時期の設定は?、ワクチン株の選定は?、などの課題が多く、まだ時間がかかりそうです。(3)ワクチン株により、有効性と副反応の発生率が異なり、国産ワクチン株より無菌性髄膜炎の発生頻度が少ないJelyl-Lynn株を含むMMRワクチンが、北里第一三共によって第Ⅱ相試験中です。


pinB型肝炎ワクチン:B型肝炎ウイルスは感染力が強く、家族内感染や保育園などの施設内感染があり、また最近では従来日本には存在しなかった遺伝子型AのB型肝炎が性感染症として若年男性中心に流行しています。母子感染予防によりキャリアは著減しましたが、疫学調査によると健常小児におけるHBs抗原陽性者は過去15年間で減少しておらず、水平感染が原因と思われます。母子感染予防のみでは限界があり、定期接種化が望まれます。また、B型肝炎ワクチンは有効性が高く抗体の消失後も発症抑止効果が続き、赤ちゃんの時に接種することで、キャリア化→肝硬変・肝癌を防ぐことが出来、癌ワクチンであるともいえます。


pin実際の運用にあたっては、保険診療による現行の母子感染予防と、予防接種法による定期接種制度の2本建てになります。母子感染予防は、出生時にHBワクチン+HBIG、生後1カ月と6カ月にHBワクチンというスケジュールです。一方、定期接種は、生後2カ月、3カ月、7-8カ月の接種スケジュールが検討されています(図)。ワクチンスケジュールの混同により母子垂直感染を起こすことがないようにくれぐれも注意が必要です。また、定期接種については生後12カ月までとし、感染リスクが高い場合は出生直後の予防も考慮、ワクチン製剤は遺伝子型A型(ヘプタバックス)、C型(ビームゲン)のどちらも選択可能、など検討されています。


pin成人のB型急性肝炎で治癒したと思われていたケースで、免疫抑制剤などにより再活性化され劇症肝炎を引き起こす場合があることがわかってきました。また、遺伝子型AのB型肝炎ウイルスは成人でも5~10%がキャリア化します。これらを防ぐために、思春期世代へのワクチン接種による予防も大切です。B型肝炎ワクチンが定期接種化されると、赤ちゃんのワクチンがますます増え、6種混合ワクチンの開発も必要になります。B型肝炎ワクチンについては、これらの課題を踏まえながら、年内の定期接種化を目指している状況です。


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