お知らせ


2015/06/04更新

5月27日に第446回福岡地区小児科医会学術講演会が開催されました

pin特別講演:「小児形成外科~患児とその家族のスマイル回復とQOL向上を求めて~」
福岡大学医学部形成外科准教授 高木 誠司先生


pin特別講演:「小児科医のための排尿症状の診方、考え方」
自治医科大学とちぎ子ども医療センター小児泌尿器科教授 中井 秀郎先生


pin器質的・神経学的疾病を持たない小児の下部尿路機能異常である、過活動膀胱 overactive bladder(OAB)、機能異常的排尿 dysfunctional voiding(DV)、bladder bowel dysfunction(BBD)、および夜尿症について、小児泌尿器を専門とする中井 秀郎先生から講演していただきました。


pinOABの定義は、「尿意切迫感を繰り返している状態」です。現在は、大脳皮質での膀胱救心路からのシグナルの処理障害(cortico-centric vision)が病因と考えられています。徐々に高まる通常の尿意シグナルは認識できず、また最大尿意を知覚しても排尿しておくという判断も出来ません。急に抑えがたい尿意を感じますが、通常尿意を元々知らないため、尿意切迫感を異常自覚症状として訴える事は決してありません。他覚症状として昼間尿失禁がありますが、おしめり程度の場合も多く、積極的な聞き取りが必要になります。また急に尿意を感じた瞬間モジモジする様子が、排尿の我慢習慣に見えたり、トイレにダッシュする切迫排尿も見られます。「小児OAB患者に対する抗コリン薬の安全性と有効性の検討」が現在進行中です。


pinDVはOABを持つ児の誤った排尿習慣から起こると考えられます。特徴として、女児に多く、症状は排出障害で、尿路感染、VUR、便秘を伴いやすい事です。メカニズムは排尿我慢習慣から骨盤底筋過緊張が生じ、排尿時にも外尿道括約筋の収縮が起こるためと考えられます。残尿が慢性化し、また尿流測定検査ではstaccato patternとなります。OABの蓄尿障害症状から、排出障害へと症状が進み、尿路感染症を引き起こすようになります。


pinBBDはUTI、VURの原因として最近重視されるようになってきましたが診断基準はまだありません。習慣的便秘とDVの悪循環が基本概念です。理論的な背景は、下部尿路機能と直腸機能の様々な相互作用で、脊髄レベルでの神経学的リンク、尿道括約筋、肛門括約筋の随意収縮リンク、宿便が膀胱容量を低下させる(仮説)、宿便の移動が膀胱を外から圧迫し尿意切迫感をもたらす(仮説)、などになります。


pinOABの治療のためには、上述のの異常を総合的に改善していく必要があります。First lineの治療としては、尿意がなくても2-3時間に1度は定時的に排尿させ、弱い尿意を知覚・認識できるようトレーニングしていきます。Second lineの治療として抗コリン剤を内服させて膀胱充満までの時間を延ばして、排尿トレーニングのチャンスを増やします。習慣的便秘がある場合は、定時排便、食事療法、また緩下剤、浣腸の使用も検討します。


pin夜尿症は、遺伝、覚醒しにくさ、夜間膀胱容量の小ささ、夜間尿量過多が多因子的に関与します。夜尿症の治療は、夜間の水分摂取制限などの生活指導が基本になりますが、治療を開始する場合は以下のようにします。(1)夜間膀胱容量と尿量過多に対しては、抗コリン剤は夜間膀胱容量の増大効果は乏しいため、ミニリンメルトで夜間尿量を減少させることで対処します。(2)漏れ検知器でおもらしを感知してトイレに行かせるアラーム療法もエビデンスのある治療法です。(3)夜間多尿がある場合はミニリンメルト、ない場合はアラーム療法を選択します。どちらを行うか両親に選択してもらい、無効な場合他方を行うという方法もあります。