お知らせ


2015/04/23更新

4月22日に第445回福岡地区小児科医会学術講演会が開催されました

pin一般演題:「予防接種に関する最新情報~DPT-IPV、水痘ワクチンを中心に~」
 一般財団法人阪大微生物研究会 学術部 学術課 西川 大貴先生


pin特別講演:「原発性免疫不全症候群~予防接種と治療としての造血幹細胞移植を中心に~」
 九州大学大学院医学研究院周産期小児医療学講座 高田 英俊先生


pin原発性免疫不全症候群に予防接種を行う際の注意点と造血幹細胞移植による治療について、高田英俊先生からご講演いただきました。


pin原発性免疫不全症候群は、自然免疫や獲得免疫を担う好中球、マクロファージ、樹状細胞、補体、NK細胞、T・B細胞等の障害により発症します。単一遺伝子異常が大部分で、250以上の責任遺伝子が同定されています。疾患数が多いものとしてはBruton無ガンマグロブリン血症、慢性肉芽腫症、分類不能型無ガンマグロブリン血症、重症複合免疫不全症などがあり、国内患者推計数は2900人程度です。
 原発性免疫不全症候群が疑われる場合は、予防接種を行う前に免疫学的評価を行い予防接種の方針を立てる必要があります。なお詳細は、「小児の臓器移植および免疫不全状態における予防接種ガイドライン」(図参照)をご覧下さい。


pin原発性免疫不全症候群を疑う徴候として、ガイドラインには10項目が記載されています。最も重要なのは家族歴で、乳幼児期に感染症で死亡した家族がいる場合は免疫不全症を疑う必要があります。他に、乳児期から呼吸器・消化器感染症を繰り返し体重増加不良が見られる児、年2回以上繰り返す肺炎、1歳以後の難治性鵞口瘡・広範なイボ、などに気をつける必要があります。
 これらを認めた場合は、好中球数、リンパ球数、リンパ球サブセット解析(フローサイトメーター)、IgG・A・M・E、CH50、C3、C4、好中球貪食能・殺菌能(フローサイトメーター)、胸部X線、リンパ球幼弱化反応、NK活性を行いスクリーニングします。


pin原発性免疫不全患者への予防接種では次の問題が起こりえます。生ワクチン自体による感染症の発症、免疫抑制剤や生物学的製剤を使用している場合の接種禁忌、不活化ワクチンの無効化、自己炎症性疾患などでワクチンにより免疫異常反応がトリガーされる。
 生ワクチンについては、重症の原発性免疫不全症では避けるべきですが、軽症の場合は利益がリスクを上回る可能性が高いです。無ガンマグロブリン血症では抗体産生が期待出来ず、現時点で接種する方向ではありません。同居家族のワクチン接種は推奨されますが、ロタウイルスワクチンを内服する場合は感児との接触で感染させる可能性があります。
 不活化ワクチンについては、有効性があると考えられる疾患では積極的に接種する方針です。また、パリビズマブ(シナジス)は積極的に行うべきです。細かい各論についてはガイドラインをご参照下さい。


pin現在、高田先生を研究代表者とする厚生省委託研究、「原発性免疫不全症に対する造血幹細胞移植法の確立」が進んでいます。平成28年度いっぱいまでに、疾患ごとの移植ガイドライン作成・公開が予定されています。
 平成25年1月1日~26年6月30日の全国調査では、36例の造血幹細胞移植(うち慢性肉芽腫症が14例)につき詳細なデータが残されています。これまでに分かってきたのは、(1)近年は移植前処置の進歩により、移植後ガンマグロブリン補充が不要になった、(2)日本は諸外国と比較した場合、非血縁臍帯血移植が多い、(3)生後3カ月以内の移植で生存率が高い、などです。米国では、重症複合免疫不全症の新生児スクリーニングの報告があり、日本でも導入が望まれます。


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