お知らせ


2015/03/03更新

2月25日に第443回福岡地区小児科医会学術講演会が開催されました

pin一般演題:「アレルギー性鼻炎からみた小児気管支喘息」
 手塚 純一郎先生(国立病院機構福岡東医療センター小児科医長)


pin特別講演:「ワクチン接種でロタウイルス胃腸炎を『歴史』に変えよう!」
 森内 浩幸先生(長崎大学大学院医歯薬学総合研究科小児科学教授)


在でも世界中で700万人近い子どもが感染症で命を失い、約1/4の260万人がワクチンによって命を救うことが出来ると試算されています。その中で、肺炎球菌感染症、麻疹、ロタウイルス感染症が、1~3位を占めています。日本の感染症死亡の状況を考えると、いかにワクチンがすばらしい発明かわかりますが、実は日本は世界の中ではワクチン後進国で、ワクチンに対する色々な誤解や偏見がみられます。それらの解説や、ロタウイルスワクチンの普及に向けてのお話を、森内浩幸先生からしていただきました。


pin代表的な誤解や偏見としては、(1)その病気の流行がなくなったらワクチンはもういらない、(2)ワクチンは副作用がひどく危険だ、(3)ワクチンより自然に感染した方が免疫がつく、(4)ワクチンは子どものためのものである、などです。


pin【流行がなくなったらワクチンはもういらない】

 古今東西でワクチンの中止や、拒否により再流行が起こっています。日本の例としては、百日咳ワクチンがあります。百日咳は、かつて年間1万人以上の死者を出していましたが、ワクチンによりほぼ死者数0になっていました。ワクチンの副作用死疑い2人の報告のため1975年にいったんワクチンが中止になりましたが、その結果再流行が起こり3年間で133人の死者を出しました。

【ワクチンは副作用がひどく危険】

 完全に安全ということは何事においてもありえず、ワクチンでも重篤な副作用は確かに起こりえます。しかし、それは稀なことで、ワクチンにより感染を防ぐ効果の方がはるかに重要です。また頻繁に予防接種をうける乳児期には、同じ時期に起こりやすい突然死症候群が紛れ込みやすく、ワクチンの副作用による死亡として報告されてしまいます。この紛れ込みが、年間50例くらい起こる可能性があります。

【ワクチンより自然に感染した方が免疫がつく】

 自然感染の方が確かに強力な免疫がつきます。ただし、相手にしているのは時に死を引き起こす感染症です。ワクチンで免疫をつけておけば、たとえかかるにしても軽症で済む可能性が高く、ワクチンで備えをすべきでしょう。また、肺炎球菌感染症は乳児期には感染しても免疫はつかず、ワクチンの方がより強い免疫がつきます。

【ワクチンは子どものためのもの】

 ワクチンにより子どもが感染症にかからないことで、集団免疫効果により老人の感染症も減ります。子どものワクチンにより、間接的に老人も守られているのです。


pin下痢症は世界の乳幼児の死因第3位で年間160万人が死亡しています。WHOは世界中の全ての国でロタウイルスワクチンを乳幼児に接種することを推奨しており、日本でも定期接種化が期待されています。ロタウイルスは非常に感染力が強く、衛生管理のみでは防げず、また稀に脳症をおこし(年間40人前後)、年間10~20人が死亡しています。

 日本では、ロタワクチンは任意接種で現在45%程度の接種率ですが、それでも2013/2014年シーズンは例年より流行が目立たず、接種率が90%まで上がれば流行もなくなると考えられます。