お知らせ


2014/09/27更新

9月24日に第439回福岡地区小児科医会学術講演会が開催されました

pin一般演題:「学童の突然死予防のための心臓検診」
 工藤 嘉公先生(久留米大学医学部小児科学教室助教)


pin特別講演:「川崎病診断のpitfall やっぱり川崎病は難しい」
 須田 憲治先生(久留米大学医学部小児科学教室准教授)


pin川崎病は、年々増加しており現在は毎年1万4千人以上の人が罹患しています。最も問題になる心障害は年々減っていますが、色々とpitfallの多い疾患で最新の情報を講演していただきました。


pin診断基準として、(1)症状5/6以上を確定A、(2)4/6+冠動脈病変を確定B、(3)6/4未満±冠動脈病変を不全型とします。

 不全型が最も問題になりやすいにもかかわらず、日本では診断アルゴリズムは十分に検討されていません。かわりに、AHA (American Heart Association)のアルゴリズム(図)が紹介されました。

 不全例の検討ではガンマグロブリン(IVIG)の使用は、1-2症状では45%、3症状52%、4症状70%であり、5-6症状の93%に対してやはり少ないのが目立ちました。冠動脈障害も1-2症状では、急性期15.1%、遠隔期7.4%と目立ちます。


pin感染症合併例が約1/3程度との報告があり、β-溶連菌、EBウイルスなどが代表的です。感染症合併例の予後は、非合併川崎病と差はありませんが、アデノウイルスの診断後に川崎病の診断が遅れ、巨大冠動脈瘤破裂の症例報告が提示されました。いったん感染症の診断がついた場合でも、川崎病を示唆する症状がある場合は十分に気をつける必要があるでしょう。


pin冠動脈拡大の基準として、0-4歳>3mm、5歳以上>4mm、冠動脈瘤は周辺冠動脈の1.5倍以上、がありますが明確に区切れる性質のものではありません。今後は、z-score=(測定値ー平均値)/標準偏差 (RAISE studyの派生研究のz-score projectからツールをダウンロード出来ます)などを利用し、客観的に診断する必要があるでしょう。

 川崎病以外の発熱性疾患で冠動脈拡張を伴わないとの報告もあり、不全例の診断とあわせ、心エコーは合併症の評価から診断ツールに変わったといえるでしょう。また、川崎病の冠動脈壁輝度上昇については否定的な論文が多いです。


pin須田先生の不全例を調査した所、IVIG未使用で5日以内に解熱したが、その後冠動脈病変を認めたケースが11例ありました。現在では、川崎病疑い例でも発症2週間から1カ月で心エコーを行うルーチンにしているそうです。

 年長時の川崎病については、10歳以上の13例では確定Aは8例、確定B3例、不全例2例で、症状が揃いにくく、随伴症状が多彩(胆嚢炎、膵炎を含む胃腸症状が代表)、IVIG投与が遅れやすく冠動脈病変合併が多い、などの特徴がありました。


pin川崎病の病因は不明ですが、研究のひとつが提示されました。川崎病の発生頻度と対流圏の風の吹き方に相関があるそうです。その他の傍証と照らし合わせて、中国北東部からの風にのってくる真菌毒素などがトリガーとなり発症するという仮説でした。


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