お知らせ


2014/06/30更新

6月25日に第437回福岡地区小児科医会学術講演会が開催されました

pin一般演題:「予防接種に関する最近の話題~DPT-IPVと水痘ワクチン~」
 西川 大貴氏(阪大微生物病研究会学術部)


pin特別講演:「二次施設からみた風疹流行の分析と安全なワクチン接種時の問診法(トキソプラズマについてもひと言)」
 小島 俊行先生(三井記念病院 産婦人科部長)


pin2013年に日本では風疹の大流行があり、最も問題になる新生児の先天性風疹症候群の増加もみられました。先天性風疹症候群は、風疹妊婦の胎児が風疹ウイルスに胎内感染し、先天性心疾患、難聴、白内障を3大症状とする先天奇形を起こす病気です。実際に風疹妊婦の診療にあたっている三井記念病院産婦人科の小島先生から、現状についての講演がありました。


pin小島先生の病院では、1997~2010年は風疹の顕性感染妊婦(発疹などの症状を実際に認める妊婦)は0でしたが、2011年は2人、2012年は4人、さらに2013年は13人とかつてない事態となりました。


pinこれら19人についての特徴をまとめると、(1)感染経路がはっきりせず、通勤や接客業務などで不顕性感染者からうつったと思われる人もいる。不顕性感染の夫からうつったと思われる人もいた。(2)抗体の動きから、初感染と再感染が区別された。

 前者/後者の違いは、(1)IgM抗体:20日前後にピーク/ピーク時もIgM明らかに低値、(2)IgG抗体:発疹出現後3日頃から陽性で60日後頃にピーク/発疹出現日から高値、(3)HI抗体価:発疹出現当日陰性で10日目までに急激に上昇/発疹出現当日から陽性、などであった。(3)羊水診断で胎児感染を確認出来るが検査による流産のリスクもあり、大部分の妊婦さんは検査せずに妊娠継続を決断した。(4)初感染14人(うち4人は中絶や自然流産)中、7例が先天性風疹症候群、再感染5人中(うち2人は中絶や自然流産)中、1例が先天性風疹症候群であった。


pin全体で8/13人が先天性風疹症候群に罹患しており、ワクチンによる予防が最も重要と考えられます。ワクチン接種時の注意点としては、妊娠中は接種出来ず、また接種後2カ月まで避妊が必要になります。しっかりそれを伝えることと、あやふやな対応では誤接種になることもあり、「規則的な月経があった後性交をしていない」ことを確認することが最も確実です。

 ただし、風疹ワクチン誤接種による先天性風疹症候群の発生報告はこれまではありません。


pin風疹は大流行の翌年も中規模の流行が続くのですが、今年は流行はおさまっています。これは報道や自治体を通じたワクチン接種が適切に行われ、それが効果をあげたものと思われます。


pin出生児に先天奇形をおこしうるトキソプラズマIgM抗体陽性妊婦についてもお話がありました。

 要約すると、(1)トキソプラズマIgM抗体陽性妊婦のIgG抗体avidity indexを測定し、急性感染と慢性感染に分類。(2)急性感染妊婦はアセチルスピラマイシンなどで全員治療(慢性感染妊婦は無治療)。(3)その結果、出生児232人について全例先天感染はなかった。(4)出生児の同胞(母無治療)を調べたところ、16/121人(13.2%)に先天感染を認めた。2人は軽症顕性感染で、14人は不顕性感染。(5)以上から、感染妊婦への治療効果が確認され、無治療の妊婦は先天感染児を出生する可能性があることがわかった。また、妊婦感染症スクリーニングにトキソプラズマ抗体を加え必須とする必要がある。