お知らせ


2014/03/07更新

2月25日に第433回福岡地区小児科医会学術講演会が開催されました

pin一般演題:「幼児期水疱性類天疱瘡に食物アレルギーを合併した一例」
 松崎 寛司先生(国立病院機構福岡病院小児科)


pin特別講演:「小児喘息の治療選択~フェノタイプからエンドタイプへ~」
 藤澤 隆夫先生(国立病院機構三重病院 副院長)


pin喘息は、ステロイド吸入やガイドラインによる治療の標準化がすすみ、喘息死など重症喘息は明らかに減少しました。しかし、治療上の課題がまだいくつか残されており、その話題に関する講演が行われました。


pin乳幼児は元々気道の直径が小さいことなどもあり、喘息様に胸がゼーゼーしやすい特徴があります。喘息様の症状を起こす乳幼児は、(1)ウイルスなどの影響で一時的にゼーゼーいう一過性初期喘鳴群、(2)非アトピー型喘鳴群(アレルギーの一因であるIgEを作りやすい体質は持っていないグループ)、(3)IgE関連喘鳴群、の3つのグループ(フェノタイプ[表現型])に分類することが出来ます。

 ゼーゼーの症状を起こさなくなり、なおる年齢になるまでの期間は、(1)<(2)<(3)となり、(1)のグループは3歳を越える頃には自然によくなることが多いです。

 治療薬の選択もグループ別に変えるのが望ましいのですが、元々グループを正確に分けること自体が難しく、これをはっきりさせることが第一の課題です。


pinガイドラインにもあるように、問診はグループ分けの参考になります。男児、ゼーゼーの頻度が高い、家族に喘息がいる、風邪をひいていない時もゼーゼーする、運動の刺激でゼーゼーする、アトピー性皮膚炎を合併する、などの症状がある場合は、3番目のグループである可能性が高くなります。ゼーゼーの症状も3歳以降も続くことが予想され、ステロイド吸入などの治療を厳密に行う必要があります。

 逆に1番目のグループに関しては、ロイコトリエン受容体拮抗薬がウイルス感染後の感作を減らす実験データがあります。軽症の喘息の基本治療はガイドラインでは、ロイコトリエン受容体拮抗薬 and/or クロモグリク酸ナトリウム and/or 吸入ステロイドですが、グループ分けが正確に出来れば、治療薬の選択もさらに絞り込むことが出来るでしょう。


pinエンドタイプ(いわば真の病態)を区別出来る指標が得られれば、グループ分けの指標にもなってきます。現在エンドタイプの指標としては、多抗原に感作されていることや、好酸球のマーカーのEDN(eosinophil derived neurotoxin)高値などが役立ちそうですが、さらに研究が必要です。


pin第二の課題としては、ステロイド吸入により重症喘息は減りましたが、完全になおすのは難しい点です。ステロイド吸入を行っている間は喘息のコントロールはよいのですが、終了後の喘息再発は非ステロイド治療群と差がないというスタディもあります。

 ただ、日本の治療ガイドラインは海外のガイドラインに比べコントロール目標を高く設定したプロトコールですので、日本のプロトコールで治療した子どもたちの予後がどうかは、今後の検討が必要です。