お知らせ


2014/01/29更新

1月22日に第432回福岡地区小児科医会学術講演会が開催されました

pin一般演題:「聖マリア病院における最近10年間の髄膜炎症例のまとめ」
 横山 隆人先生(横山小児科医院 院長)


pin特別講演:「肺炎球菌感染症のワクチンによる制御~血清型変化への対応~」
 西 順一郎先生(鹿児島大学大学院医歯学総合研究科 微生物学分野 教授)


pinHibワクチン、肺炎球菌ワクチンの定期接種化により、これらの菌による重症感染症(髄膜炎など)が減り効果が上がっています。しかし、肺炎球菌は血清型というタイプ分けで93もの種類があり、一筋縄ではいかない問題も起こっています。ワクチン導入後の肺炎球菌感染症に関して講演会が開かれました。


pin肺炎球菌は、常在菌として鼻咽頭に存在し、小児の20~40%、成人の10%が保菌しています。通常は無害ですが、何かの原因で血液中に進入すると菌血症を引き起こし、肺炎、髄膜炎、骨髄炎・関節炎などの重症感染症を続発します。肺炎球菌は莢膜多糖体という物質に覆われており、これで分類していくと93種類もの血清型が存在します。


pin2010年に導入された肺炎球菌ワクチンは、この中でも特に重症感染症を引き起こしやすい血清型7種類をカバーした7価肺炎球菌ワクチン(PCV7)と呼ばれるワクチンです。導入後、1道9県の全数調査などで、肺炎球菌による髄膜炎などの重症感染症が減少していることが確認されています。

 しかし、この7種類でカバー出来ないタイプ、特に19Aというタイプが増えてきていることがわかってきました。ワクチンが効かないタイプの肺炎球菌が選択的に増えてしまい、重症感染症の発症が以前の状態に戻ってしまう可能性も出てきました。


pin日本に先行して2000年にPCV7を開始した米国では、既にこの問題が起こり、2010年に19Aなど他の血清型6種類を追加した13価肺炎球菌ワクチン(PCV13)を導入しました。その結果、肺炎球菌による重症感染症がさらに減少した事が確認されました。また、従来のPCV7をうけていた子どもたちも、1回でもPCV13をうければ残りの6種類にも有効であることが研究でわかりました。

 そのため、米国ではPCV7を4回接種済みの子どもたちにもPCV13をさらに1回接種する補助的追加接種も行っています。


pin日本でもこの問題に対処するため、2013年11月から肺炎球菌ワクチンはPCV13に変更されました。残念ながら日本では、PCV7を4回接種し終わった子どもに対するPCV13の補助的追加接種は、推奨はされるが希望者が任意で行うという位置づけになりました。1道9県の調査では、1歳6カ月以上の子ども(この子たちはPCV7を4回接種済みと思われる)の肺炎球菌重症感染症の割合は45%と半数近くを占め、またその中でPCV13でないと予防できない追加タイプによる感染が36%になります。

 PCV7を4回接種済みのお子さんでも、有料にはなりますがPCV13を1回追加接種することをお勧めします。


pin肺炎球菌ワクチンは2カ月から接種出来るので、2カ月になったらすぐにうけ始めるのがよいでしょう。母親からの免疫(抗莢膜多糖体抗体)は1~2カ月で低下してしまいます。また、いったん保菌してしまった血清型に関しては、ワクチンを受けても効かない(その血清型に対する抗体については上昇しない)ことも研究でわかっています。保菌する前にワクチンをうけるのが大事です。