お知らせ


2013/10/25更新

10月23日に第430回福岡地区小児科医会学術講演会が開催されました

pin一般演題:「NICUにおけるGBS感染症について」
 加藤 稚子 先生(九州大学病院小児科)


pin特別講演:「耐性菌に立ち向かう~マクロライド耐性マイコプラズマ肺炎への適切な対応」
 尾内 一信 先生(川崎医科大学小児科学講座 主任教授)


pinマイコプラズマ感染症は、従来は4年周期でオリンピックの年に一致して流行していましたが、有効性が高いニューマクロライドの登場により1990年台以降は流行のピークが認められなくなりました。しかし、2000年にニューマクロライドが効かない耐性菌が報告され、その後徐々に耐性菌が蓄積され、2011年には大流行が起こりました。 流行にあわせ、2013年2月に小児呼吸器診療ガイドライン2011追補版「小児肺炎マイコプラズマ肺炎の診断と治療に関する考え方」が発表されました。現在流行は落ち着きましたが、今回は、ガイドラインの6項目を補足する形でマイコプラズマ感染症治療に関する講演が行われました。


pin1.急性期の血清抗体価陽性所見のみでは、肺炎マイコプラズマ感染症の診断が困難な場合も多いため、急性期の確定診断には、肺炎マイコプラズマ核酸同定検査(LAMP法)を実施することが望ましい。

 >>>他に、イムノカードは偽陽性、偽陰性とも多く推奨されず、リボテストなどの新しい迅速診断キットは、LAMP法の7-8割程度信頼出来る印象とのことでした。


pin2.肺炎マイコプラズマ肺炎治療の第一選択薬に、マクロライド系薬が推奨される。
3.マクロライド系薬の効果は、投与後2〜3日以内の解熱で概ね評価できる。

 >>>マクロライド前投薬がない場合の耐性率は50%以下で、また感受性も良く除菌も良好なため第一選択薬はやはりマクロライドです。オゼックスやミノマイシンは解熱後も2~3割は除菌されず、感染を広げる原因のひとつになります。マクロライドが有効な場合は48時間以内に80%以上解熱し、ある程度有効性の指標になります。


pin4.マクロライド系薬が無効の肺炎には、使用する必要があると判断される場合は、トスフロキサシンあるいはテトラサイクリン系薬の投与を考慮する。ただし、8歳未満には、テトラサイクリン系薬剤は原則禁忌である。


 >>>小児肺炎マイコプラズマ感染症は、通常自然治癒する疾患で抗菌薬投与は必ずしも必要としません。キノロン系薬剤に対する耐性化を防ぐためにも、あくまで適正使用の範囲内で使うことが重要です。また、クリンダマイシンは耐性マイコプラズマには無効で、使用する根拠は認められません。


pin5.これらの抗菌薬の投与期間は、それぞれの薬剤で推奨されている期間を遵守する。


 >>>クラリスロマイシン10日間、アジスロマイシン3日間、トスフロキサシンあるいはテトラサイクリン系薬は、7~14日間が必要と考えられています。


pin6.重篤な肺炎症例には、ステロイドの全身投与が考慮される。ただし、安易なステロイド投与は控えるべきである。


 >>>適応はあくまでも有効な抗菌薬が投与された重篤な肺炎症例とし、安易なステロイド投与は控えるべきでしょう。